2020年9月28日 (月)

コロナとワイン

 こんにちは、ROYAL HOTEL 沖縄残波岬、料飲部・ソムリエの林田です。

 今日はコロナの今年、ワインを取り巻く環境がかなり特別で、私たちのようにワイン業界に注目してないとなかなか分からない業界話を少しさせて頂こうと思います。ワインがお好きな方にはご興味を持っていただけるかなと思います。

 まず春先、世界中でコロナが流行を始めた時期。世界のワインをリードするフランスのボルドー。ここでは40年ほど続く商習慣のボルドープリムールが行われるはずでした。

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 ボルドープリムールとは毎年春、秋に収穫し、仕込んだワインの先物取引をするもので、世界中からバイヤーが7000人以上集まり、試飲をし、商談をします。そう、それがコロナで開催できなかったのです。つまり40年ほど毎年春先に商談がまとまり初夏には収入があるというワイン界のお金の流れが止まったのです。

フランスにおいてワイン・スピリッツの輸出は航空宇宙産業に次ぐ第2位の重要な輸出産業。その中心ともいえるボルドーでこの事態は大変なことです。ワイナリーはこの危機をどう回避するのか。

今年、有名なボルドー第1級、ボルドー5大シャトーのひとつ、ムートン・ロートシルトはプリムール価格を例年の30.8%ダウンで売り出しました。今年6月、私が調べた個人でも買える2019年ビンテージのムートンのプリムールの価格は一本43,000円でした。ケース(12本)で約50円万余り。今年秋リリースされる2017年ビンテージのムートン(ムートンは3年シャトーで熟成させて初めて世に出る)の価格は6月の時点で一本90,000円でした。ケースでは100万円以上!もちろんビンテージ(収穫した年の出来栄え)によって価格は上下しますが、単純に見ると今年先物を買い、3年待ってリリースされた物を受け取ると倍になってるという計算になります。そう単純な話にはならないかもしれませんが。

秋、私は今年の収穫の秋はこれもやっぱりコロナで、適切な時期にブドウの収穫ができない可能性が高いと思っています。世界中のワイナリーは(農業全般ですが)収穫期、たくさんの季節労働者に支えられています。フランスでは言葉も通じない外国の季節労働者がたくさん働いていることは業界の常識ですが、これが入国できないかもしれないからです。まだ少し先の話なので確かではありませんが、アメリカはせっかちなトランプさんが6月の時点で今年いっぱい外国人季節労働者にビザを発給しないと発表してましたね!アメリカのワインも大変です。

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ワイン造りにとって収穫時期はとても重要なファクターで、素晴らしいワインを作ろうとすると、ぶどうの成熟度を日々見ながら適切な日に収穫することが即ワインの品質に繋がります。未熟や過熟のおいしくないブドウから美味しいワインができないことは誰にでもわかることですよね!

ワイン造りには酸化というもうひとつ重要なファクターがあります。酸化とはリンゴを切ってしばらくすると断面が茶色くなりますよね!これが酸化です。1、酸化したブドウからは素晴らしいワインは出来ない。2、一度酸化したブドウは元には戻らない。ということです。細かいことを書き始めると長くなるので今回は書きませんが、収穫したブドウはすぐに酸化が始まります。

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つまり、適切な時期の収穫と、できるだけ早急な醸造工程への移行が美味しいワイン造りの必須条件なので、人がいないからのんびり収穫するというわけにはいかないのです。今年はコロナでこれに暗雲が立ち込めています。

そしてもうひとつ私が申し上げたいお話が、日本とEUです。EUの大きな取引先はアメリカ、中国、ロシア、そして日本です。

1、アメリカ。アメリカはエアバスの件でEUからの製品に25%の追加課税をかけていることはご存知かと思いますが、これでEUのワインは売れ行きを大幅に落としています。それにアメリカのワイン業界も同じ問題を抱えていますので選挙対策でトランプさんがさらなるアメリカ優遇処置を講じても不思議ではありません。

2、中国。今のワイン価格の異常な高価格をもたらしたのは中国というマーケットが現れたからで、中国は贈賄という“当たり前“の習慣があり1本(750ml)で100万円という高級ワインは片手に持てる高価で分かり易い贈り物でした。しかし習近平政権はこの贈収賄を禁じ、そして贅沢物も禁止とした他、コロナで経済も下降気味になっています。

3、ロシア。現在は持ち直してはいるものの、ロシアのウクライナ侵攻によりEUとロシアは経済制裁のやり合いを演じ、あまり良好な関係とは言えません。

そこで私達日本です。日本はEUと経済連携協定(EPA)を結び、EUのワインの関税が撤廃されたことは耳に新しいのですが、ワインといえば、今でもボジョレーヌーボーは全生産量の半分を日本が輸入しています。そう、現在、日本はEUにとって最も優良な取引相手なのです。

ここからまとめなのですが、EUのワイン業界は

1、コロナで経済的ダメージがあり先が見通せない。

2、今年のブドウは適切な時期に収穫、醸造が困難かもしれない。

3、日本は優良な取引相手。

ということで、先に書いたシャトー・ムートン・ロートシルトの30.8%引きのように今年は憧れのワインが安価で手に入るかもしれませんし、素晴らしいバックビンテージの蔵出しワインも安価で日本の市場に出てくるかもしれません。もちろんEUだって大切なワイン業界、救済策は講じるでしょうが、日本の状況を鑑みると隅々にまで行き渡るとは思えません。ここまで全て私の予想の話で確かな話ではありませんが、秋以降、知り合いのソムリエや、ワイン取り扱い店さんに声をかけていると掘り出し物に巡り合えるかもしれませんよ!

あともしご購入の際は確かなところから購入されることをお勧めします。こんな時期、偽物もかなり出回ると思われますので。

ではまた違うワインのお話で!

SEE YOU!

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